【読書メモ】さようなら、オレンジ
トロントには図書館がたくさんあります。
少し歩けばすぐ図書館が見つかるくらいで、100以上あるとか。
Wi-Fi完備、図書・DVDの貸出、電源あり、飲食OKということで、最近はよく図書館で自習しています。すごいのが、書籍なら3週間、DVDなら1週間で50item借りられること。ただし、延長すると延滞料が発生しますので、注意が必要です。
大きな図書館には日本語の書籍、DVDもあるのでおすすめ。最近はちょっとずつ積み上がったKindleの本代を少しでも抑えるべく、図書館で本を借りるようになりました。
今回図書館で借りて読んだのがこちら
少し前に太宰治賞を受賞したというのを聞いて、ずっと読みたいと思っていたものでした。結果的に、今、このタイミングで読めてすごくよかったです。
物語はアフリカからの難民(国は特定されていません)の女性サリマと日本人女性のサユリの二つの軸で展開します。舞台はオーストラリアの田舎町で、それぞれ難民、移民という立場です。
サリマは家族と命からがら逃げてきたものの、旦那に捨てられ、二人の息子にも邪険にされる。はじめは言葉を話せないながら、生活のために スーパーでの精肉加工という仕事を懸命に続けていく。一方のサユリは、感情や希望を押し殺して旦那と赤ん坊の娘と暮らしているが、言葉への情熱ともいうものを捨てられずにいる。
そんな二人の交流が物語の中心です。(本当は少し違うのですが、それは最後まで読めばわかります)
この物語の何が一番印象的かというと、「Second Language」の位置づけと、それに付随した母語への向き合い方ではないかと思います。よく英語を話せるだけでは意味がないというのを聞きますが、言語の探究って終わりがないものかもしれない。言葉にはすごく力がある。サリマにとって生きる糧を得るためだったものが、女性として、一人の人間としての自立につながっていく過程も印象的です。
文章はやや冗長と言える部分もあり読みにくい人もいるかもしれませんが、私は詩的な中に逆にストレートなものを感じて好きでした。
これはトロントで読んだことに価値があったと思います。本って一番いいタイミングで出会えることがあるから不思議ですね。